ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

UN-GO episode:0 因果論

観てきました。面白かったです。 以下ネタバレ注意。 【世界観】 ちょっと整理しないと解りにくいですね。 NPO「戦場で歌う会」をわざと危険な紛争地に行かせ犠牲者を出すことで、自衛隊派遣へ世論を動かそうとした、と。 その任務にあたったのが世良田蒔郎。既に死亡したことになっていたそうなので、そういった工作活動を担当する裏の機関に所属するようになっていたんでしょうね。 そうして紛争地へ自衛隊を派兵した結果、日本国内にテロ攻撃が行われ「戦争」となり国家は疲弊。一部の人間が言うには「連合国の傀儡政権」が生まれた。 国際社会は「歌う会」がいた某国の反政府軍側を支援していたそうなので、日本にテロを仕掛けたのはこの某国の政府側なのかな(テロを起こしたのは「複数勢力」らしいので、某国政府だけではないようですが)。 陰謀論 派兵世論を高めることは日本の一部勢力(元自衛官の世良田を動かしているわけですから自衛隊関係者も噛んでそう)が目論んだそうですが、では彼らの目的とは何だったのか。 2つほど考えられるかなあ。 1,紛争地派遣と国民の怒りの世論を利用し自衛隊の権限を拡大、後に憲法を改正し、日本がきちんとした軍事力を持てるようにしたかった。 2,既に紛争地に派兵していた大国(おそらくは「連合国」のどこか。そしてもっと言えばアメリカ)が、日本の助力が欲しいが為に、日本の一部勢力に命令してやらせた。 この2つのどちらも正解ということもありえますが。 つまり、某大国が自衛隊を派遣する為の世論工作を行うよう圧力をかけ、一部勢力がそれをチャンスと捉えて、これを期に軍備復活を図った、という構図です。 未だ情報が少なすぎて「とある勢力」の目的はこのくらいしか想像できないですね。 おそらくはこの「勢力」とは、アンザイエリの件第2話「無情のうた」参照)を演出した者達と同一でしょうが。 となると、海勝会長もやはりこの「勢力」の一員かな。映画でも何か知っている様子でしたしね。 分からないのは、この「戦争」はどこまでが彼らの思惑通りだったのかということ。 この戦争により日本は敗戦(おそらくは大規模出兵を撤回したということ)、国家は疲弊し、政府は連合国の傀儡政権となってしまった。 うーん、とある勢力の狙いが1・2のどちらか、もしくは両方だとしても、日本がテロ攻撃を受けて疲弊(もしかすると出兵撤退も)するというのは思惑と外れるよなあ。 陰謀を巡らせたはいいものの、テロ勢力から想定外に強力な反撃を受けてしまった、というところでしょうか。 【「戦場で歌う会」と公共保安隊】 中々NPOに対して辛辣な描き方でしたね。 似たような人たちで思い出すのは、イラク(アフガンだっけ)に行って人質にされた3人組ですかね。結局首を切られて殺された大学生もいたなあ。 まあ、はっきり言ってこの手の人たちは良くないと自分も思います。 確かにやっていることそのものは善行なのかもしれませんが、それで人質にとられでもしたら大勢の人たちに迷惑をかけるわけですから。 そしてその際に払う身代金は日本国民の税金ですからね。 紛争地帯や治安が最悪な所に行くのは、それが善意からの行為だとしても「彼らを助ける為に尽力する人々」のことを考えれば、あまりに身勝手でしょう。 とはいえ、現地の人々の生活支援や復興支援の為に、という人々の方が「歌う会」よりはマシだとは思いますけどね。 歌う会はちょっと自己満足の要素が大きすぎます。 しかし、そんな彼らが公共保安隊から「護国の犠牲者」と言われているようで。 憎き敵(テロ勢力、某国政府)に真っ先に立ち向かった人々、という扱いなんですかね。 特に大野妙心(実際は違いましたが)は公共保安隊に非常に尊敬されていました。戦争がきっかけで公共保安隊が出来たからかなあ。 とはいえ、何というか。この世界の日本人は現実の日本人とはだいぶズレがありますね。 もし現実の日本で「歌う会」のような人々が処刑されたとしても、「ああ、気の毒に」「バカがバカやって殺されちゃったな」くらいの反応しか無いでしょう。 少なくとも、「同胞が殺された! 我が国も自衛隊を派兵せねば!」とはならんでしょうね。 まあ、公共保安隊の設立や憲法改正などはその後の日本へのテロやアンザイ エリの件などを経ての話ですから、これほどまでにタカ派な論調が高まったのは、実際にはテロによる被害が大きいんでしょうけどね。 結果的に「戦場で歌う会」への同情が高まっただけで。 【敗戦後の思想】 新情報拡散防止法によって「夜長姫」の曲が規制されているので、敗戦によってタカ派的な風潮が取り締まられているのかとも思ったのですが、どうもそうではない、どころか真逆のようです。 やはり、「夜長姫」が規制されたのは、その歌詞に乗せられた思想が問題とされたわけではなく、アンザイエリの陰謀発覚を恐れてのもののようですね。 この作品は、現実の第二次世界大戦後がモデルとなっているようなので、タカ派思想の取り締まりも現実の戦後のようにあったのかな、と思ったわけですが、UN-GO世界では「敗戦」による思想の「反動」は無いですね。 むしろ、戦中に作られた公共保安隊が維持されていたり、島田白郎という戦争を推進していた政治家が大手をふっていたりと、ほとんど戦中のままです。 【連合国】 これは、第二次大戦後の日本を支配した「連合国」が敵国であったのに対して、UN-GOで言う「連合国」は日本の同盟国であるからでしょうね。 この「戦争」の敵はテロ勢力や派兵先の某国政府であって、連合国はそれらと敵対し日本と共闘していた国家群なのでしょう。 現代の欧米辺りだと思います。まあ第二次大戦の連合国も欧米なわけですが。 この世界の「連合国」はテロ攻撃にあった日本を復興支援する同盟国、もしくは友好国であり、戦中からの日本の思想を変える必要が無いのだと考えられます。 なぜなら、その思想や世論のお陰で、某国政府やテロ勢力との戦いに日本を引き込めたわけですから。 むしろ、「テロ勢力や某国政府」との戦闘なり敵対なりがまだ継続しているのだとすれば、日本で反戦思想が広がっては困るのです。 だからこそ、戦争肯定論者の島田白郎などが政府の重鎮となっているのでしょう。元ボディガードの山本が彼を「連合国の走狗」と呼ぶのもその為かもしれません。 山本曰く、現政権は連合国の傀儡だそうですが、どのような関係なんでしょうね。 どうやらこの世界の日本は、テロ攻撃からの復興に他国の支援が必要なほどだったみたいですから、かなり首根っこを捕まれた状態なのかな。 おそらく現代の日本以上に影響は受けているのでしょうね。 現実の野田政権はアメリカの傀儡というよりは、財務省の傀儡っぽいですからね。TPPに関してもアメリカの圧力に屈して、というよりは野田政権からすり寄っているようですし。 勝手に連合国=米国と決めつけていますけど。まあ連合国なんて呼称してるのはぼかす為で、スタッフの意図としてはアメリカでしょう。 ギルティクラウンのGHQと同じ。あっちの方がかなり反米色が強いですが。 【世良田蒔郎】 会師・大野妙心こと世良田蒔郎。 この人、帰国した段階で別天王を入手していたので、もう「世良田蒔郎」としての仕事をする必要はないのに、きっちり任務を果たしてますね。 それどころか、偽の処刑映像まで作って依頼主達の想定以上の働きをしています。 何でだろう。仕事に一応の誇りを持ってやっていたのかな。 彼の雇い主である「とある勢力」に別天王のことを教えたとは思えない(というか大野妙心として帰国した時点で世良田は死んだと思わせたでしょうし)ので、「とある勢力」の人々はさぞ驚いたでしょうね。 「任務を与えた世良田は死んだけど、歌う会の連中は考えてた以上にインパクトのある死に方をしてくれて、おまけに大野とかいうメンバーの1人がビデオまで持って帰ってくれるとは。ラッキー♪」といった感じでしょうか。 まあ、非人道的な陰謀を巡らせていたとはいえ、さすがにそこまで人間性は腐っていないと思いますが。 「うわあ、これは申し訳ないな……。しかし、彼らの犠牲を無駄にしない為にも計画を成功させねば」。 こうかね。これはこれでタチ悪いな。 【別天王会】 8話感想で『オオノミョウシンの事件は、教祖が信者を殺害したそうなので、つまり、ベッテンノウを名乗る教祖が、本物のベッテンノウに憑かれたオオノミョウシンに操られ、信者達を殺害したということでしょうか。それとも、本物のベッテンノウが新興宗教の教祖をしていて、速水は神であるベッテンノウを指して「信者を殺害した教祖」と呼んだ? さすがにこれはないかな』 と書きましたが、後者が正解でしたか。 「さすがにこれはないかな」と書いたのは、別天王が不特定多数の前に姿を現していると思っていなかったからです。 そして、大野(世良田)が神である別天王を教祖に祭り上げているとも思っていませんでした。 世良田は何で会師・大野妙心であることを止めたんでしょうね。警察、というより新十郎に目を付けられたからでしょうか。 邪魔になる新十郎を消す為に罪を被せ、また一から金儲けの方法を探そうとしたのかな。別天王さえいればあの教団に拘らずとも簡単なことですしね。 別天王の力は、そいつの声を聴かないと効果はないらしいですが、これはスピーカー越しでも良いみたいですね。 テレビとかで使えば超強力だな。実際、「歌う会処刑ビデオ」はテレビを介して国民に暗示をかけたんでしょうけど。 【倉田由子】 因果はこの人の肉体を使ってるのか。 大人版因果は由子の肉体そのままなんでしょうかね。正直色とかが違いすぎて同一人物という気がしないんですが。 EDで描かれてるので、新十郎の恋人とかかと思ったら意外と関係は浅かった。 因果が使用している肉体、新十郎の御魂への考え方に影響を与えたという意味では大きなキャラではありますけど。 彼女の人の心についての考えは、『ペルソナ』のテーマと通じるものがありましたね。 たしかに隠している部分が全てというわけではなく、人の心は複合的なものでしょう。 かなり醜悪な心の内を晒して死んでいった「歌う会」のメンバー達も、一方で「これで少しでも紛争地の人々を癒せれば」という想いはきっと本当だったでしょうから。 そう信じたいですしね。