なるほど、お館様との問答をこう繋げてくるか。
第137話『不滅』にて先代のお館様に「君が死ねば全ての鬼が滅ぶのだろう?」と指摘された時、鬼舞辻無惨が激しく動揺していた事の答え合わせが描かれた。
つまり彼は「死そのもの」よりも実は、「この世界に自分の痕跡を何一つ遺せない」ことを最も恐れていたのだろう。
鬼は子を作れない。
生み出した鬼は自分の死と共に全て消滅してしまう。
死体すらも残らない。
誰かに想いを繋ごうにも、そもそもその継ぐべき想いを持ち合わせていない。
「何にも創れない、どこにも行けない」無価値で無意味な生を無駄にだらだらと続けてきただけ。
その現実に耐えられないからこそ、鬼舞辻さんはあれ程に生き汚く、自分の命にしがみついたのだろう。
人間社会に隠れ潜む際に、やたらと家族を持ちたがったのもその一環だと思われる。
家族を作ることで、自分というモノを何らかの形で他者に繋げられないか、無意識のうちに試行していたのではないか。
……もっとも、そうやってようやく辿り着いた「託す」という境地で選ばれた『夢』の内容が、「鬼殺隊を滅ぼす」なのが実に鬼舞辻無惨らしいというか。
千年以上も生きてきて、託したい想いなど何も無く、単なる自己防衛の一環でしかなかった鬼殺隊の滅亡を『夢』にすり替えるこの空虚さよ。
鬼舞辻無惨という男がいかに空っぽの人間だったのか、滑稽を通り越して哀れに思えてくる。
今週の描写だけを見ると、まるで彼が勝ち逃げしたかのような印象もあるが、どうも霊界にて上記のような「現実」を突き付けられ、絶望しながら地獄に堕ちていくんじゃないかという気がするな。