ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

映画『ONE PIECE FILM GOLD』感想

 何気にサイファーポールの長の役職名が初めて明かされたなあ。

※以下、ネタバレ注意

 いや、面白かった。事前の予告通りきっちりエンタテインンンンメンットッ!! していて良かったと思う。
 どちらが好きかと問われれば前作の『FILM Z』ではあるものの、ワンピで毎回あんな話をやられても困るからね。

 悪趣味な演出を引っくり返すクライマックスでの麦わらの一味の策というのは、脚本の黒岩 勉氏自身がパンフレットで述べていたように確かにワンピースらしくはないけれども、それだけに予想もしていなかったから中々意表を突かれた。


 テゾーロも実に魅力的な悪役だ。
 愛する女性を奪い、自身までも奴隷とした天竜人を激しく憎悪しながら、いつしか自分自身が金で女を侍らせ、弱者を奴隷として扱う天竜人のようになってしまったというキャラクターは深みがあったしなあ。

 ドフラミンゴに通ずるところもあるが、彼の場合は元々の生まれが天竜人で、かつての地位に戻ろうとしていた男だったのに対し、テローゾは底辺から天竜人になろうとした。
 対極の出自ながら同類であるという二人の性質は、テゾーロの恰好がドフラミンゴに似ていたこととも無関係ではあるまい。

 予告編やジャンプの宣伝でがっつりと描かれていたからテゾーロの背景のことはあらかじめ全て知った状態で鑑賞することになったものの、本編でフラッシュバックした映像などだけでも十分察せるものであったし、「悲しい過去を用意して深みを出しつつも、必要以上の深入りは避け、観客がテゾーロに感情移入し過ぎるのを防ぐ」というバランス感覚も素晴らしい。


 ドフラミンゴもそうだが、そういった「可哀想な過去」を持つ一方で、現代の姿は完膚なきまでのクズ人間であり、最後まで改心することなく敵がクズを貫いてカタルシスを与えてくれるのは、ワンピースの最大の長所の一つだろう。
 つい最近プレイした逆転裁判6 特別編の犯人とか、からくりサーカスフェイスレスとか、Fate/Zeroのジル・ド・レェとか、ああいう風に安易に改心されると、これまでどんなに気に入っている悪役だったとしてもどうしても冷めてしまう。

 悪役というのは倒される瞬間にこそ美学が宿るのだから。


 今作で一番面白かったのはラキラキの実の攻略かな。
 まさに「こんな奴、どうやって倒したらいいんだ」という敵に対し、カジノという舞台とウソップの特技を上手く組み合わせた納得の攻略法で、舌を巻いた。

 これはできれば原作も参考にしてほしいなあ(たっぷりと練る時間のある映画の脚本と週刊漫画を一緒にするのは間違っていることは分かっているが)。

 余談になるが、大ONE PIECE新聞の第二号で尾田先生が「『このパンチは強いから倒せる』というんじゃ読者が納得しない。こうすれば勝てるだろうというアイデアが出た時、読者が初めて納得してくれると思う」と述べているのを読んだときは思わず目を疑った。

 まあ、これは奇策や頭脳戦について言っているのではなく、例えばギア4なども武装色の覇気とゴムの性質を掛け合わせた強化ゴム」という『こうすれば勝てるだろうというアイデアであって、尾田先生にとっては「このパンチは強いから倒せる」という類のものではないという意味なんだろうけど。
 
 
 閑話休題
 今作では詳細不明のサイファーポール〝イージス〟ゼロに関する新情報が明かされていて実に興味深かった(もちろん、これは映画が原作の設定準拠であればの話だが、前述の黒岩氏のインタビューによると「原作とリンクしているところは、もちろん、尾田さんの意見を聞きながら作っていきました」だそうだから、原作と同じ設定である可能性は高い?)。
 
 スパンダムと顔を合わせたテゾーロがサイファーポール総監に、もっと強い奴と軍艦10隻をつけろと伝えろ」(意訳)と言っていたことから、CPを統括するのはこの「総監」(あるいは「総官」や「総管」?)なる役職らしい。

 ただ、データブックである『ONE PIECE YELLOW』によると、CP1~9を統括しているのは「世界政府総帥」となっていた。
 『ONE PIECE YELLOW』の記述が全て正しいとは全く限らない(そもそも、SBSを元に記述したと思われる「世界政府総帥」という役職も、実際に本編でコングが登場したときには「世界政府全軍総帥」に変更されている)とはいえ、「サイファーポール総監」の指揮下にあるのはCP0だけという可能性はある。

 世界貴族直属であるCP-0に対し、CP9以下のサイファーポールは五老星の指示に従って活動している場面が描かれている。
 同じ「サイファーポール」という名を冠し、「最上級」機関と言われながらも、CP0とCP1~9は指揮・命令系統が全く違う、事実上別組織なのである。

 名目上は「サイファーポール総監」が全てのCPを統括している可能性はあるが、実際にはCP0以外は世界政府全軍総帥の下に置かれているのだろう。

 まあ、もっとも1~9にしても五老星から直接指示を受けているのだから、実際のところは全軍総帥の管轄下にすらないが。
 それどころか、海軍元帥すら総帥の頭越しに五老星に抗議したりしているし、「全軍総帥」はほとんど名誉職みたいなものなのかもしれない。


 ともかく、天竜人を背後に持つCP-0の権力は絶大なようだ。
 組織のトップではないであろうルッチが海軍元帥である〝赤犬〟サカズキ相手に横柄な口を効くところなど、CP9長官のスパンダインが中将である〝青雉〟クザンに敬意を表した口調だったのとは対照的で、「偉ォなったもんじゃのォ、ロブ・ルッチ」と言いたくなるサカズキの気持ちも解る。

 というか、四皇の最高幹部ですら一蹴するサボ相手に互角に渡り合うなんて、ルッチは強くなり過ぎではなかろうか。
 主人公であるルフィにも劣らない凄まじい成長率である。
 

 777巻ではルッチ達が政府機関に復職した経緯が判明。
 曰く、スパンダムの父であるスパンダインが病に倒れ、権力が弱まったことが原因らしい。

 スパンダインの政敵が、エニエスロビー陥落の責任を全て被せられたルッチ達の名誉を回復し、それによりスパンダム父子を追い落とそうとした、といったところだろうか。
 【ONE PIECE】世界政府の機関について色々でも書いたことだが、スパンダムがどういう地位に就いていたのか知りたいなあ。

【その他、気になったことなど】
・映画に隠しキャラが7人いるそうなのだけど、予告編の映像で既に出ていたヘラクレス、宮元監督のインタビューで明かされており、比較的分かり易かった〝茶トン〟トキカケ中将と〝桃うさぎ〟ギオン中将を除けば、アブサロムにしか気が付かなかったなあ……。あと3人は誰なんだろう。

・アブサロムは現在「アブサ」という名のフリーライターとして活躍しているから、北の海の新聞王、タイムス伯爵との関係で来たのかな?

・能力者が海水を浴びただけで力が抜けているのは読み込み不足だろう……。海水だろうが真水だろうが膝くらいまで浸からないと影響はないはず。

・あと、スパンダムの海楼石製の鎖で拘束されていたはずのルフィがいつの間にか自由になっていたから、自力で海楼石の鎖から脱したように見えてしまった。

・海楼石で脱力している以上それは不可能だから、誰かが外してやったんだとは思うけど、その描写は必要ではないか。

・少々サブキャラが多くて話が分散してしまった印象はある。レイズ・マックスはあんまりいらなかったような気も。

・大事な天上金の護衛にスパンダムを一人で行かせた総監はヤル気が無いと言われても仕方ない。ひょっとしてこの総監がスパンダインの政敵で、スパンダムがしくじったら全責任を負わせてやろうと目論んでいたとか?

・普通に考えれば年を取るほど価値が落ち、手元に置いておけばおくほど食費や美容代などで費用も嵩むステラを、3年間も強気の値段で据え置いていた奴隷商人の商魂はちょっと凄いと思った。

・もし、そのまま買い手がつかずに年齢だけ重ね、最終的に結局値下げすることを考えたら、普通の商人ならまだ若く、コストもかかっていないうちに売ってしまおうと考えるはず。

・その誘惑と恐れに打ち勝ち、3年間もステラに投資しながら高額の価格を貫いた売主の忍耐と読みは、相当な商才があってこそのものだろう。

・商才と言えば、普通に肉体労働を3年続けただけで天竜人以外は誰も手を出せなかった額を溜められるとは思えないから、この頃からテゾーロは起業して会社を成功させていたのかもしれない。

・ゴルゴルの実を手にしたとはいえ、操る金を手に入れるための元手はゴルゴルの能力とは関係なくテゾーロの才覚で集めたのだろうし。

・そういえば書いてて思い出したんだけど、バンプ・オブ・チキンの曲にテゾーロとステラみたいな歌詞がなかったっけ?