クサヴァーさんに染まるくらいならグリシャに染まっていた方がまだマシだったのかジークの不幸ですやね。
【生まれてくる命】
今回の話でヒストリアが孕んでいるのは、エレンとの子供だというのはほぼほぼ確定したと見て良いだろう。
エルディアの反出生主義を唱えるジークと、我が子を作り、子供達の未来の為に敢えて悪役を演じるエレン。
いやはや、実に美しい対比ではありませんか。
エレンが我が子を持ち、これから生まれてくるエルディアの子らの未来の為に戦っていることを知った時のジークの反応が今から楽しみである。
同じ父親に育てられたはずなのに、エレンは「生まれてきて良かった」、「エルディア人はこれからも生き続けるべきだ」と考えている。
ジークはきっと深く傷つき、怒り狂うことだろう。
【救済】
前回、ジークがパラディ島の今後を懸念している独白が描かれたことで、彼がエルディア人を救おうとしていることは確定だと思っていたのだが、まさかこんな救済方法だとは……。
イェレナは一体どこまで知らされてたんだろう。
彼女にもエルディア人の根絶(ないし安楽死)を願う動機があるのか、あるいはただジークの信奉者だから従っているだけなのか。
ジーク曰く、彼の真意は自分とエレンにしか解らないそうなので、イェレナは少なくとも心から目的を一にする同志というわけではなさそうかなあ。
イェレナの立ち位置として考えられるのは、
1、安楽死について知らされておらず、ジークが強硬策でエルディアを守ろうとしてると思っている
2、安楽死のことを知っており、エルディア人に恨みがある為協力している
3、安楽死のことを知っており、エルディア人はどうでもいいが協力している。
この辺だろうか。
マーレに併合された祖国を救うという彼女の目的が真実であり、「エルディア人が絶滅するまでの間、地鳴らしの脅威を使ってマーレを抑え、併合された国を独立させる」ことをジークが約束しているのだとすれば、彼女にとって重要なのはジークとエレンが始祖の力を手に入れることだから、どうでも良いエルディア人の絶滅など気にしていない、という可能性が高いかも。
第111話『森の子ら』と第112話『無知』感想と、エレンの真の目的について で書いたように、エルディア人と距離を置いているグリーズが、エルディア解放を訴えるイェーガー派に協力してるのが疑問だったのだけれど、これは「安楽死」のことを聞かされていたからこそだったのね。
ニコロとは違い、彼はユミルの民の絶滅を望んでいる、と。
【毒親?】
なんかグリシャをクソ親扱いしてる人を多く見たのだけれど、それに関してはちょっと物申したい。
たしかに彼は息子を短命にしようとしていたが、それはジークに同胞を救う大義に殉じる人間になって欲しかったからだ。
現代日本の価値観にはそぐわないことかもしれないが、グリシャはグリシャなりに息子を愛していたのは間違いないだろう。
その点について彼を責める気にはとてもなれない。
エルディア人を救う為には、誰かがやらねばならない事だったのは間違いないのだから。
もっとも、それを一方的に押し付ける形が教育法として良くなかったのは確かであり、手記にもあった通りグリシャ自身もそれを反省して、エレンの時には「自らの意志で仲間の為に立ち上がるような人間」に育てあげたわけであるが。
【同じ穴の……】
クサヴァーさんに関しても、何だかんだで自らの思想にジークを染め上げて、自身の望む通りの「使命」を背負わせ、結局はジークの寿命を削らせた点でグリシャと同じことをしているのは、諌山先生一流の皮肉だよね。
手記に書かれたいた通り、グリシャはジークのことを決して愛していないわけではなかった。
そもそも、ジーク本人にしても、当初は別に両親に対して憎しみを抱いていたわけでは無かったことが今回明らかになっている。
しかし、クサヴァーさんはそんなジークに対して、「両親から愛されていなかった」という呪いの言葉を刷り込み、彼の憎悪を掻き立て、「エルディア人の絶滅」という歪んだ使命を負わせてしまった。
無論、これは実の親を密告したという罪悪感からジークの精神を守る為、悪いのは親なんだと思わせようとした結果だから、クサヴァーさんを責めることはできないが、結局は彼も「エルディアの安楽死」という目的を否定せず、ジークが獣の巨人の継承者となって寿命を縮めることを肯定してしまったのである。
クサヴァーさんもまた、普通の親としてジークを守ることはせずに、グリシャと同じ道を選んだわけだ。
どちらにしても、ジークの運命は決まっていたのだろう。