芥見先生……わ……私は……。
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※以下、ネタバレ注意
【汗顔の至り】
正直に言って私は芥見先生のことを「古いものや老人をむやみやたらと蔑視する軽い人間」と見做して小馬鹿にしていた。
でも、は、はは……そうか。バカは俺か……。
そう、楽巌寺学長は実際には生徒達の命を第一に考えると比較的まともな人間であることが明白になった。
ここに至っては、五条先生が楽巌寺学長に抱いていた「少年院に東京校の1年を向かわせて、あわよくば全員死なせようとしていた」疑惑(むしろ決めつけ)は完全に冤罪だったと考えるべきだろう。
虎杖を始末しようと目論んでいたことは事実であっても、その為に無関係の生徒を巻き込む方策を取るような人間ではなかったのである。
その虎杖の抹殺にしても、大勢の人々を虐殺しかねない呪霊を呼び起こす危険を危惧してのものであり、呪術師としてはある程度の正当性があるものだ。
そもそも、あの少年院の一件は夏油が虎杖(の中の宿儺)の実力を測る為に行った工作だったのだから、やはり呪術協会上層部の他の誰かが夏油と通じており、伊地知に命じて1年生達に任務を与えたというのが事の真相ということになる。
これまでも私は何かにつけて、「あれは楽巌寺学長の仕業ではないのではないか?」と書き続けてはきたものの、常に(どうせそうはならんやろけどな……)という諦観の念がそこにはあった。
だが、瓢箪から駒と言うべきか、どうやら私のこの願望は実際のものであったらしい。
少なくとも、楽巌寺学長が真っ当な教育者の姿勢を見せた以上、「腐ったミカンのバーゲンセール」「クソ呪術界をリセットする」といった五条先生の過激極まりない発言は、偏見に満ちたものだったことはたしかなのだ。
てっきり私は五条悟というキャラクターは絶対的な作中是であり、彼の大義は肯定されるべきものとして描かれるのだと思い込んでいた。
ところが芥見先生はそうしなかった。
五条悟という男もまた、一方的で偏狭な物の見方しか出来ていない、思い上がった未熟な若者として作られたキャラクターだったのである。
素晴らしい。
主人公の師に当たる人物であり、作中最強の人気キャラクターをこのように描いてくるとは……。
禅院家当主が描かれた時から「もしかしたら……」とは思っていたのだが、呪術協会上層部を単なる腐敗組織としないことで世界観がぐんと多層的になった。
こうなると、18話で私が引っ掛かっていた五条先生の発言に改めて注目すべきだろう。
楽巌寺学長の会話の中で彼は、呪術協会の上層部が「しょーもない地位や伝統のために塞き止めていた力の波が」押し寄せたことにより、身内の呪術師だけでなく、呪霊達までも強化されつつある状況に喜色を露わにした。
一体五条先生の過去に何があったのか解らないが、彼は協会上層部を憎むがあまり、強力な呪霊達に無辜の民が危険に晒される社会となったとしても、協会の作った秩序の崩壊を喜ぶような人間に歪んでしまっているのだ。
そしてこの歪みは、芥見先生が意図して描いたものだったというのが今回明らかになったわけである。
既存の秩序と呪術協会への憎しみに囚われた五条先生はこの先どうなっていくのだろう。
対立と破壊を求めるのではなく、むしろ妥協と根回しによって組織を緩やかに変える「大人」へと成長していくのか、それともこの歪みを内包したまま、行き着くところまで行ってしまうのか。
あながちこの説も間違ってはいないのかもしれない。
【呪術廻戦】五条悟ラスボス説
【その他】
・まあ、楽巌寺学長が保護すべきと考えてる生徒は京都校の子達だけ、というガッカリなオチも普通にありそうなんだけど。
・ハンガーラックやっぱ呪霊じゃなくて呪術師なのか。
・呪術協会の会員にとっては常識な帳のこともよく知らないようだし、夏油は一体どこからコイツを拾ってきたんだか。
・東堂の次に名前が出るってことは、三輪ちゃんは呪霊相手の奥の手でも持ってるのかな。
・まあ、メカ丸がいない以上、東堂の次に戦闘力が高いのは三輪ちゃんってことなのかもしれないけど。
・真依さんと魔女っ娘はあんまり戦闘向きではないからなあ。
・楽巌寺学長の変身に関してはやり過ぎであんまり刺さんなかったです。