ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

ヒストリアが身籠ったのは、エレンの子供である【進撃の巨人 27巻感想】

 大勝利だ!!
 我ら新生エレヒス帝国の初陣は大勝利だぞ!!
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  エレンはヒストリアとの間に子供をもうけた。
 そう考えれば全ての辻褄は合うのではないか。

 彼がジークの計画に反発した一番の理由は、ヒストリアの犠牲が組み込まれていたことにある。
 始祖の巨人を操る条件が、王族の巨人と接触することだと気づいた時も、壁の中に危機が迫っていることを分かっていてなお、アルミンやミカサにすら明かさず自分の胸に秘めていた

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 逆に言うと、ヒストリアの犠牲の話が出てくる前は、むしろエレンはイェレナが語ったジークの計画に乗り気だった
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 それだけ、ヒストリアを犠牲にすることはエレンにとって絶対に許容できない事なのが窺い知れる。

 彼がヒストリアの獣の継承について反発したことは、イェレナもその場で目撃している。
 だとすれば、密会の場でイェレナは「ヒストリアを犠牲にしない形」での計画をエレンに対して提案した可能性は高い。

 そもそも、「地鳴らし」の脅威を外交のカードとする為に、必ずしも王族の巨人を常に保持する必要はない。
 「始祖の巨人の力」「王族の血」、そして「巨人化薬(そして出来れば始祖以外の九つの巨人)の3つさえ持っていれば、十分な脅しの道具となる。

 ではなぜイェレナはその提案を兵政権にもしなかったのかと思われるかもしれないが、エレンとは違い兵政権にとってはヒストリアの犠牲はさほど大きな問題ではない
 むしろ、積極的に彼女を巨人と化し、ジークを食らわせようと企てていた程だ。
 政権上層部にとって躊躇の原因はジーク本人の信頼性であり、ヒストリアでは無かった。そんなことはイェレナも百も承知だったろう。

 さて、ヒストリアを犠牲にする心配が無くなったのなら、むしろエレンにとってはジークの計画に積極的に協力する理由が生まれる。
 なんとなれば、このまま何の解決策も浮かばないままいたずらに時間を費やせば、最終的に兵政権はヒストリアを巨人に変えるに決まっているからだ。

 兵政権からすれば、なにも別に信用のできないジークの計画に乗る必要は無い。
 ヒストリアを巨人とし、アルミンを食わせてしまえば、ジーク抜きでも地鳴らしの発動条件は揃うのだから。

 「地鳴らし」さえあれば、世界はもうエルディアに歯向かうことはできない。
 ジークやイェレナの仲介が無くとも、ヒィズル国もエルディア王国に協力するだろう。
 もし、ジークの計画に乗らなかった場合、兵政権がその結論に到達するのは自明だった。
 このままでは、ヒストリアの寿命を奪うのみならず、アルミンの命まで失うことになる

 しかしながら、ここに来てもエレンはまだ悩んでいたはずだ。
 王族を常時巨人とはせず、即座には始祖の巨人の力を使えない状態で他国と渡り合うには、地鳴らしの脅威を世界に見せつけることはより一層必要となる。
 殺戮は避けられない。

 また、上層部がジークとの協力に消極的である以上、兵政権との対立が予想される。
 (実際にそうなったように)兵団と十分な連携が取れないままでの作戦実行や、内紛が発生することだろう。
 そうなれば、大切な仲間達を危険に晒すことになる。

 イェレナとの密会後、エレンが即座に行動を起こせなかったのも仕方のないことだ。

 ところが、そんなエレンが急変した。
 ジークやイェレナ、フロック達と共謀し、僅か1年前は「他の誰よりも大事」と言っていた仲間を危険な戦いにムリヤリ巻き込んだ。

 なぜか?
 
 そのきっかけとなった事態こそが、ヒストリアの懐妊なのである。
 エレンは仲間達やヒストリア、エルディア王国だけでなく、我が子を守らねばならぬ父となったのだ。

 憲兵団高官のデブはヒストリアが自らの獣の巨人継承を先延ばしにする為に、イェレナに吹き込まれて子供を作ったなどとホザいていたが、他の高官が言っていたように彼女はそんな性格ではない。
 つまり、ヒストリアが現在同居している男のところに行くのを見ていたフードの人物もイェレナとは考えにくい。
 そう、何を隠そうあの人物はエレンである。

 後述するが、彼は自らを憎まれ役とすることでエルディアを守ろうとしていると思われる。
 その為、ヒストリアと我が子に類が及ばぬように、ヒストリアの幼馴染に託したのだ。

 デブ眼鏡の推論とは話は逆さまで、イェレナの計略の一環としてヒストリアが懐妊したのではなく、ヒストリアが懐妊したからこそエレンはイェレナの計略に乗ることとなった訳である。

 王家の血筋を持つ子を授かったことで、エレンはいよいよもってジークに協力するしか無くなった。
 このまま手をこまねいていれば愛するヒストリアが、そして我が子が兵政権の手によって、歴代のフリッツ王家のように巨人化を継ぐ宿命を背負わされてしまうからである。
 父となったエレンには、それだけは絶対に許すことはできなかった。
 例え殺戮に手を染めることになったとしても。

 無論、彼は家族の為なら仲間達を犠牲にしても良いと考えるようになったわけではない。
 それはサシャの死を知った時の無念の表情からも明らかだ。
 
 だが、他に手段は無かった。
 ミカサの言うように皆に戦ってもらう以外に、仲間と妻子どちらも救う手立ては無かったののである。

 しかし、仲間に相談することもまた出来なかった。
 彼は自らが汚名を被ることで、エルディア王国を救おうとしている。
 だからこそ自身の企てからは、可能な限り皆を遠ざけようした。

 進撃の巨人 第111話『森の子ら』と第112話『無知』感想と、エレンの真の目的についてで書いたことだが、私は、

 エレンはジークを使って地鳴らしを手に入れた上で、フロック等強硬派共々敢えて兵政権に「倒される」ことにより、「地鳴らし」の力を兵団側に譲り渡そうと画策している、と。
 
そうすれば以降はハンジ達が国家の実権を握る形で、「地鳴らし」の圧倒的軍事力を背景にして、各国に対して対話路線で臨むことができる。


 というのがエレンの真の目的だと予想している。
 ジーク主導のエルディア帝国の力による支配に協力するように見せかけて、ジークとフロックら強硬派共々「悪魔」として死のうとしているわけだ。

 ゆえに、ハンジ団長にもリヴァイ兵長にも、アルミンにもミカサにも戦友達にさえ何も話せなかった。
 そしてヒストリアを遠ざけた。

 それはひとえに、他の誰よりも大切な人達を犠牲にしたくないからこそなのだ。


 情熱大陸で映し出された一コマ。
 あの人物がエレンなのだとすれば、真意を知った仲間たちがこのあまりにも哀しい自己犠牲から彼を救い出してくれるのではないかと期待したいところだが、果たして今後どうなっていくのだろうか。