887話のオーブンさんの技について混乱が見られたので。
※以下、ネタバレ注意
逃亡するノストラ・カステロ号を攻撃するため、オーブンさんが海に手を浸して温度を上げたことについて、「海に手を触れているにも関わず、オーブンの力が抜けていないのは何故か?」、「海に対しても悪魔の実の能力が影響するのはおかしい」といった感想が多く見られた。
まず、前者の疑問についてだが、悪魔の実の能力者は海に触れたくらいでは脱力しない。
41巻のSBSにてその辺りの設定の説明がある。
内容をまとめると、
・悪魔の実を食べた者は、海に嫌われ泳げない体になる。
・ここで言う〝海〟とは、川、プール、お風呂、水のたまっている場所全てを指す。
・全身が〝海〟に浸かると多少もがくくらいしか出来なくなる。
・〝海〟に浸かったのが体の一部だけならば、その分症状は軽くなる。
・雨やシャワーなど、流れ落ちる水に関しては全く影響は無い。
ということになる。
要するに、悪魔の実の能力者は、身体の大部分が水に浸かると力が抜けて、能力も(能動的には)使えなくなるが、多少浸る程度ならば行動に何の支障も無いし、その水が本物の「海」だったとしても、真水の場合と何の変わりもないということだ。
例えば、アラバスタ編にてルフィがクロコダイルの奸計により水に浸かった際も、脱力し始めたのは水位が太腿まで達してからだった。
また、そんな状況であっても、(ルフィとさほど身長の変わらないであろう)Mr.3はドルドルの能力を使用している。
つまり、「能力者の力が抜け始めるのは、太腿くらいまで水に浸かってから」、「その場合でも、能力が使用不能になる程ではない」ということになる。
であれば、当然海水に手首を浸けた程だけのオーブンさんが、能力の使用を封じられる程に脱力するなどという事態は考えられない。
海水と悪魔の実の能力に関する設定は、映画『ONE PIECE FILM GOLD』のスタッフですら誤解しており、劇中で「吹き上げられた海水を浴びたルフィ達の力が抜ける」という場面があった。
本来ならば、上記のように流れ落ちる水を浴びても何の影響も無いはずなので、スタッフや編集部の確認不足なのだろう。
次に、「海に対しても悪魔の実の能力が影響するのはおかしい」という件だが、結論から言うと、「悪魔の実の能力が海に対しては通じない」などという設定は存在しないのである。
悪魔の実を食べた者は、海に嫌われカナヅチとなるが、かといって能力に対する「抵抗力」を海が持っているわけではない。
実際、これまでも青雉が海を凍らせるなど、悪魔の実の能力の影響が海にまで及ぶ描写はいくつかあった。
それどころか、海を凝縮したような存在である海楼石で作られた鎖ですら、ローがシャンブルズで入れ替えを行っており、悪魔の実の能力が通じることが分かっている。
以上の様に、オーブンさんの『熱海温泉』という技は、設定矛盾でもなければ、オーブンさんが特別海に対して耐性を持っていたわけでもなく、これまでの悪魔の実の設定通りなのである。