※以下、ネタバレ注意
あまりにも捻りがない。
ゴジラが一匹しかいない云々の説明が出てきた時点で、「これは最終的にゾロゾロと大量に出現するか、最初のゴジラが強化されて出現するか、もしくはゴジラより更に強力な怪獣が生まれていたか、なんにしろ卓袱台返しされるパターンだな」と予想がついてしまった。
子ゴジラとの戦闘を「これが最終決戦なんだ」と錯覚する勢いできっちりと盛り上げてくれれば、最初の予想を忘れられたかもしれないが、まあ～～～～盛り上がらない。
私は鑑賞前は知らなかったのだが、続編ありきの構想のせいかメインキャラがほとんど死なないうえに、ゴジラの攻略があまりにも順調に行き過ぎていて、これが単なる前フリに過ぎないことを否が応でも意識させられる。
絶望的な戦力差という設定の敵との決戦で、名有りキャラの犠牲者が出ないのはあまりにも不自然だろう。
そこに不自然さを感じさせないような工夫をしてくれなければ、胡散臭さしか感じられない。
例えば、犠牲者を出さずとも、予期せぬ事象によって作戦が破綻寸前にまで追い込まれ、そこからの逆転劇を演出してくれればこちらも手に汗を握って見ることができた。
あまりにも絶望が足りない。
ゴジラ獣やゴジラ鳥の出現で本陣が損害を受け、その結果指揮官を失うことにはなったものの、積極的な探索を行わないだけで、所定の行動は継続できるという展開にしてしまったばかりに、その後はほとんどトントン拍子と言って良いほどに淡々と進んでいった。
これでは今回の作戦がいわゆる「本当の悲劇への序章」に過ぎないことが見え見えである。
「ゴジラを倒したと思ったら比較にならないほど強力な真ゴジラが現れた」というオチ（しかも大して独創的でもない）に胡坐をかいて、そこまでの描写を疎かにし過ぎだろう。
だいたい、ゴジラとの接触前の話に尺を使い過ぎたのではないか？
無駄に凝った世界観にしたせいで、過剰な説明が必要となり、肝心のゴジラへの対処に尺が割けずに無味無臭のつまらない戦闘になってしまった。
これまでのゴジラとは一味違う作品にしたかったのだろうが、いくら世界観を捻ったり捏ねたりしてみたところで、物語に工夫がないのでは意味がない。
主人公の造形も酷いものだった。
どう考えても「一度、撤退して体制を立て直し、地球が本当に奪還に値するかどうかも含めて再検討すべき」という大佐の方針の方が説得力があり、そのせいでサカキ大尉が感情論で部下を扇動し、危険な任務に突っ込ませる愚か者に映ってしまう。
一度、ゴジラ獣等の襲撃を受け、損害を被ったにも関わらず、それらの横槍を全く想定していない作戦も「バカか？」と言いたくなった。
もっともこれは意図的なキャラ造形で、虚淵玄お得意の「良いことを言っているようで、その実誤った選択をし続けたから最後に当然の破局が来たんだ」という話なのだろうが、続編ありきの映画で主人公をそんなキャラにされても何も面白くない。
単に「好感度の低い主人公」の印象が残るだけだ。
虚淵玄もなあ……。脚本家としてマンネリ化してるんじゃないか。
脚本が虚淵玄という時点で、その作品をある程度知っている者なら「悲劇的などんでん返し」があるものだと考えるので、他の脚本家の手による作品よりも予想がし易くなってしまう。
まどマギの3話も「あー、はいはい」という感じだったが、今作のラストも「でしょうね」としか思えなかった。
これは別に彼だけの責任ではなく、そういうイメージがついていることはスタッフも解っているはずなのだから、虚淵玄を関わらせた時点で、よっぽど「どんでん返しを悟らせない」工夫を凝らさねばならないだろう。
この映画にはそれが無かった。
簡単に予想がつき、しかもオチありきで過程の面白さが足りないという、よくある駄作である。
『シン・ゴジラ』によってせっかく再び熱がついたゴジラシリーズに水を差したと、そう言われても仕方がないだろう。
【その他】
・ゴジラシリーズを見たのは幼少期のことなのでほとんど内容を覚えていないのだが、あの宇宙人達は過去作に登場したんだろうな。
・その情報を知らないと邪馬台国みたいな妙なキャラデザをちょっと滑稽に感じてしまった。
・地球人を好戦的な種族呼ばわりしていたが、メカゴジラを作っていた宇宙人は温厚な種族なのか？
・邪馬台族によると、もしメカゴジラでゴジラを殲滅できていたら、今度は地球人にその牙が剥いたらしいが。
・物資が足りない中で異なる三つの種族が問題なく共存できているのはややご都合主義を感じなくもないが、邪馬台族とメカゴジ族が理性的なので上手く回っているということかな。
・中央委員会、どんな腐った特権階級かと思いきや、割と妥当な判断しか下していないのに、老害扱いされてて可哀想。
・最初から怪しさ全開の友人邪馬台族が何の捻りもなく危険人物なのは笑える。
・ゴジラ以外にも怪獣が多数出現していたという設定だったのに、1万年後の地球の危険生物をゴジラしか想定していないのはあまりにも見通しが甘すぎるだろ。
・まあでも、防護服を着てるだけ『エイリアン コヴェナント』の登場人物の頭よりはマシか。
・あっちと違って大気に毒性があるから当然の処置ではあるけど。
・この映画で褒めるところがあるとすれば大佐の最期くらいかな。ベタではあるが。
・ヒロイン要らなくね？
・多分、続編で活躍させるつもりなんだろうけど、一作目でもそれなりの役割を与えてくれないと……。
・最後でDr.STONEを思い出した。
