ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

呪骸・虎杖に搭載された痴皇的記憶操作機能について【呪術廻戦】

 105話の引きの時点では単なる被せネタだと思ったんだけど、まさか本当に偽装記憶の能力だったとは。

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虎杖悠仁、夜蛾学長の作った呪骸説

neoamakusa.hatenablog.com

【造られた親友】

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 上記の記事で書いたように、虎杖の「お尻と身長が大きい女が好み」という設定は、1級術師である東堂が好感を抱くよう誘導する為に付与されたと考えられる。

 夜蛾の目論見通り、東堂は虎杖を親友と見做し、彼の能力強化を指導した他、1級昇格の推薦者にもなった。 

 

 その際に東堂の心情に影響を与えた「存在しない記憶」が、単なる妄想ではなく、虎杖によって植え付けられたものである可能性がここに来て急浮上してきたのである。

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【記憶の操作】

 こうなってから考えてみると、確かに『偽装された記憶を植え付けられる』という操作は、まさに虎杖が夜蛾学長によってされていることなんだよね。

 虎杖は人間のような自我を持つ一方で、己の出自に何の疑問も抱かなかったり、記録上は百葉箱にあったはずの宿儺の指を「拾った」と思い込まされたりしている

 

 私はこれを夜蛾の呪骸操作の一環だと考えていたのだが、彼の一味には記憶操作を行える呪術師がいるのかもしれない。

 そして、その呪術師の術式を虎杖製造の際に防衛機能として組み込んだ、と。

 

【防衛機能】

 そう、発動のタイミングを見ても、この偽装記憶を付与する機能を虎杖に搭載した理由は、彼の身を守る為であろう。

 まさに痴皇が骸にそうしていたように、虎杖に危害を加える者に対し、彼との友好的な記憶を植え付ける事で攻撃を制止しようという試みである。f:id:neoamakusa:20200625094116p:plain

 東堂や脹相の様子からして、その偽装記憶にはかなり強力な精神作用があるようだから、防衛機能としては優秀であると言えそうだ。 

 

 虎杖が「呪骸」なのも、偽装記憶の被害者であった『骸』と掛けているのかもしれない。

 

【発動条件】

 虎杖に搭載されたこの偽装記憶の機能によって影響を受けた人物として、東堂と脹相の他に、吉野順平もそれに当たるのではないかという考察があった。

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 この考察が正しいと仮定した場合、東堂・脹相・順平に共通するのは「肉体を持つこと」、そして「直前に虎杖を流血させていること」である。

 単行本を読み返したところ、虎杖に血を流させた「人間」はこの三名以外にはいない(たぶん)。

 九相図次男・三男戦では毒こそ食らったものの、虎杖自身は出血していなかった。

 

 つまり、この記憶操作機能とは、人間の脳を持つ者を対象とし、虎杖の流血をトリガーとして発動すると考えるべきだろう。

 基本的には対呪術師用の防衛装置というわけだ。

 

 脳、つまり人体に作用する術式と言えば、やはり加茂家が思い浮かぶ。

 虎杖にこの機能を付けたのがニセ夏油だとすれば、彼の正体はやはり人体実験に明け暮れた「御三家の汚点」こと、加茂憲倫である可能性が高い。

 

【虎杖への作用】

 虎杖もまたこの記憶操作の術式によって偽造された記憶を元に行動していることは先に述べた通りだが、痴皇式偽装記憶発動の際、彼自身にも記憶操作が施されている可能性がある。

 

 東堂への偽装記憶の移植後、虎杖もまた一時的に東堂のことを「親友」だと思い込むようになっていた

 ジャンプの巻末コメントにて芥見先生はこれを「東堂によって洗脳」と書いていたが、これは真相を誤魔化す為のブラフで、実際には虎杖の記憶も術式の影響を受けていたのかもしれない。

 

 つまり、偽装記憶を植え付けた相手がそれを受け入れて虎杖に好意的な反応を見せた場合、虎杖もそれに応えて友好関係を結ぶよう、一時的に彼自身の記憶も偽造される「設定」があらかじめ組み込まれているというわけだ。

 

 痴皇式偽装記憶が虎杖を守る為のセーフティ機能なら、命を狙われる状況から一転、せっかく好意的になった相手と敵対し続けては意味が無い。

 虎杖が捏造された記憶に操られている敵との戦闘を停止するよう設定されているとすれば筋が通る。

 脹相が人間の肉体から受肉した存在であるように、虎杖も人間の死体から作られた呪骸だと考えられるから、脳はあるはずだ。

 

 本編での言及や単行本での解説ではなく、巻末コメントの言葉なら「あれは嘘です」で済む話だ。

 芥見先生ならやりそうなことではある。

 

 上記の通り、もともと虎杖は東堂に好感をもたれるように、彼と同じ性的嗜好を「設定」されていたと考えられるが、東堂に力試し目的で攻撃される事まで夜蛾やニセ夏油が見越して、痴皇式記憶操作機能を備えさせていたかは微妙なところかな。

 東堂に痴皇式偽装記憶が発動したのはあくまで偶然で、それが上手い具合に転がっただけかもしれない。

 

【疑わしき思い出】

 記憶操作の術式があるとなると、他にも夜蛾やニセ夏油に都合の良い偽造記憶を与えられて利用されてる人間がいそうだなあ。

 

 極端な話、あれだけ尺を取って描かれた『懐玉』が、丸々夜蛾やニセ夏油に作られた偽造記憶という可能性も完全に否定することはできないわけだ(さすがに五条の脳に作用は無理だろうけど)。

 例えば、「釘崎野薔薇に都会から来た親友なんて本当はいなかった」なんて事もあり得る。

 

 今後は登場人物の語る過去の記憶は全て疑ってかかる必要がありそうだ。

 

【小沢優子】

 さて、偽装記憶の概念が出て来たことで、小沢優子の語る「中学時代の虎杖との記憶」も捏造だったのではないか? という意見が見られた。

 確かに全く無いとは言い切れないが、私は否定的だ。

 

 まず、小沢優子にわざわざ偽の記憶を植え付けるような利は無いだろう。

 虎杖をより本物に人間らしく見せる為に、彼に恋する女を用意した……と考えることも出来なくはないが、手間の割りには大した役には立たない。

 

 もっと大規模に、例えば本当は虎杖に中学時代など存在せず彼の出身校とされている中学校の関係者は生徒・教師に至るまで全員が虎杖の偽装記憶を植え付けられているという可能性も否定はできない。

 とはいえ、大勢の人間を巻き込めば、それだけ発覚の危険は高まる。

 夜蛾の呪骸が成長することはパンダで判明しているし、そんなリスクを負うよりは虎杖を実際に中学へ通わせた方が安全だろう。

 

 虎杖の出自に関する調査と記録は夜蛾学長が捏造・改竄するにしても、なるべく自然な形で呪術協会に入れたかっただろうから、おそらく中学生辺りからは既に「虎杖老人の孫」として人間社会で活動させていたと思われる。

 

【虎杖老人】

 私はこれまで虎杖老人を夜蛾やニセ夏油の協力者であり、孤独を紛らわせる為に進んで虎杖の祖父役を受け入れたと予想していた。

 だが、記憶操作ができる術師が夜蛾一味にいるとなれば、彼もまた記憶を書き換えられて本当に「虎杖悠仁」を孫と認識していた可能性もありそうだ。

 

 ただ、虎杖老人の遺言は、虎杖悠仁が「自らの意志で」呪術師として活動し、積極的に宿儺の指を飲み込むきっかけとなった。

 つまり、夜蛾やニセ夏油が容易した「台本」通りの言葉を虎杖老人は話しただけと考えられるが、記憶操作で特定の遺言を言わせるのは困難な気はする。

 傀儡よりは協力者という方がしっくり来るかな。

 

【まとめ】

 要するに虎杖悠仁とは、「加茂家の術式と自身の研究で人体と脳を知り尽くしたニセ夏油(=加茂憲倫)」「傀儡呪術学の第一人者である夜蛾正道」によって造られた、

 

『宿儺の器となるべき、記憶操作機能を持つ究極の呪骸』

 

 なのである。

 

 こんな手間暇をかけてまで虎杖を作り、今なお彼の自由意志という形で誘導する目的は一体何なのか。

 冒頭の記事でも書いたことだが、私は夜蛾達の目的を「宿儺の力を傀儡である虎杖に制御させることで、自由に操る事」だと睨んでいる。

 

 宿儺にバレても、五条その他の呪術師にバレても計画は終わる。

 だからこそ、人間に極限まで近づけた呪骸と、齟齬を消す為の記憶操作が必要だったわけだ。