ネオ天草のジャンプ感想日記

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偽物の夏油傑が呪骸である事と、黒幕・夜蛾学長の目的について【呪術廻戦 第88話】

 夏油偽物説・虎杖呪骸説・夜蛾黒幕説・冥冥裏切者説の総ざらい的な記事。

【偽夏油】

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 最初に疑いを抱いたのは第25話『固陋蠢愚』からだ。

 真人との接触前からぼんやりとではあるが呪霊が見えたりと、呪術師としての素養を持った吉野順平を見殺しにしたことから、「コイツは夏油ではないんじゃないか……?」と思うようになった。

 

 確かに、夏油傑は必要とあらば呪術師でも殺す男だ。

 しかし、順平の場合、明らかに不必要な遊び半分の死であった。

 宿儺が優位となる縛りを虎杖に結ばせる目的は結局失敗しているし、虎杖を宿儺との取引に応じざるを得ない状況を作りたいのなら、別に呪術師を標的にする必要はない

 非術師で十分代用可能だ。

 こんな遊び半分の雑な計画の為に大事な若い呪術師が、呪霊ごときに嬲り殺しにされる事を許すなど、夏油の行いとは到底考え難い

 

 その後も呪術師を利用するだけ利用してあっさり切り捨てるなど、「呪術師だけの理想世界を作る」などと息巻いていた夏油らしからぬ言動が続く。

 

 そもそも、暗躍する呪詛師の存在にまで辿り着きながら、夏油の事を全く想定していない時点で、少なくとも五条先生の認識では確実に夏油傑は死んでいるのだ。

 

 また、特級呪術師の4人が揃って描かれたカラーや、アニメ化決定の巻頭カラーで五条悟の対として夏油が描かれた時も、彼の額には傷が無かった。

 もし、現在の夏油傑が本物なのであれば、わざわざ過去の姿を描く必要はない。

 彼が偽物だからこそ、「夏油傑」を夏油傑として描く際には、傷を描かないように徹底しているのである。

 

 極めつけが今回の88話での「夏油傑全然余裕じゃん。もっとヒリヒリしないと」という台詞。

 およそ夏油が使わぬような軽薄な口調なのもさることながら、独り言に近い状況で『親友』をフルネームで呼び、ヘラヘラと笑いながら彼を追い込もうとしている。

 

 多くの読者がここで、コイツが夏油傑ではないことに気が付いただろう。

 

【夏油を装うメリット】

 夏油傑は盤星教を裏から支配し、その資金を吸い上げていた。

 天元様の暴走という全人類を危険に晒す大罪を犯した後も、盤星教は呪術協会から徹底的な追究を受ける事は無かった。

 呪術協会上層部の中に内通者がいることも考慮すれば、夏油の一件の後も盤星教の教団が存続している可能性は極めて高い。

 また、夏油に従っていた部下達が未だ逃げのびているとすれば、彼らを手駒として自由に操ることが可能だ。

 夏油を装うことで、生前の彼が手中にしていた金と人をほとんど全て引き継ぐことが出来るのである。

 

 もっとも、上述の通りニセ夏油は他の呪術師を尊重したりはしない。

 もし、彼をホンモノの夏油傑だと信じて従った部下は、利用されるだけ利用された挙句、ボロ雑巾のように捨てられることになるだろう。

 

【偽夏油の正体】

 では、この紛い物の夏油は一体何者なのだろうか。

 最初に思い浮かぶのはやはり『呪霊が取り憑いている』『整形した別人』辺りだろう。

 だが、ニセ夏油は花御の何らかの発言を受けて、「よく言うよ、呪霊の分際で」と呪霊を見下す発言をして嘲笑っている。

 また、夏油は0巻での決戦の際、自らが取り込んだ全ての呪霊を一つにして里香にぶつけた挙句、敗北しており、彼の体内に呪霊は残っていなかった

 その状況で五条がトドメを刺している以上、呪霊が夏油の遺体に干渉できたとは考え難い

 故に私は当初、整形した別人の可能性が最も高いと睨んでいた。

 その考えは次に述べる仮説により一変する。

 

【内通者】

 呪術協会上層部にニセ夏油の内通者が存在する事が明示されたのは、第10話である。

 彼は漏瑚との会話で少年院に特級呪霊が発生した一件を「宿儺の実力を確かめるため」と説明していたが、それには虎杖達に任務を与える立場にある人物の協力が必要だからだ。

 五条先生はこの一件を「虎杖を危険視する協会保守派が抹殺しようとした」と決めつけているが、実際には的外れな思い込みだったのである。

 

 ニセ夏油と内通者が「宿儺がせっかく受肉した身体を捨てられるわけがない」と読んでいたのか、代替となる計画を用意して「別にここで虎杖が死んでも構わない」と考えていたのか、あるいは「宿儺が伏黒恵に興味を持つこと」までもが計画通りなのかは分からないが、少なくとも『虎杖の抹殺』が目的などではなかったのは確かだ。

 

【黒幕・夜蛾 正道】

 さて、上層部に潜む内通者であるが、私は夜蛾学長だと予想している。

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 0巻を読んでも解るように、彼は呪術高専の指揮官であり、現場の呪術師達の任務を統括する立場にある。

 

 少年院の一件だけでなく、順平の事件も『虎杖(を任された七海)が映画館の調査任務に就く』事が必須だった。

 更に、宿儺の指を取り込んだドア呪霊の調査にも、虎杖達が選ばれているが、これを偶然と片付けるにはあまりにも不自然だ。

 これまで虎杖が関わった任務には全て、内通者の干渉があったと見るべきだろう。

 任務の内容にそれほど頻繁に介入しておきながら怪しまれない上層部の人間は、呪術師の任務の管理責任者である夜蛾しかあり得ない。

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 肝心な時に限っていつも五条悟が「出張」に行っているのも、たまたまと考えるにはニセ夏油や真人達に都合が良すぎる。

 重要な局面では五条の邪魔が入らぬよう、夜蛾が彼を遠地での任務に就かせているのだろう。

 

【ニセ夏油】

 ここでニセ夏油の正体と繋がってくる。

 夜蛾が内通者だとすれば、ニセ夏油とは夏油傑の遺体から縫製された呪骸ではなかろうか。

 小説版には赤ん坊の死体から生前の姿そっくりに作られた呪骸が登場した。

 しかも、その呪骸を作ったのは単なる呪具であったから、『傀儡呪術学の第一人者』である夜蛾ならば、より精巧で人間に近い状態の呪骸を作る事も可能だろう。

 

 五条悟がトドメを刺した夏油の遺体は、当然呪術高専へと運ばれたはずだ。

 そして、埋葬ないし火葬したかのように装い、彼の遺体を自らの手駒へと仕立て上げた。

 

 その意味では、夜蛾は単なる「内通者」などではなく、一連の事件の黒幕であり、ニセ夏油は彼の命令に従っているだけだと考えられる。

 

 そしてもう一人(一体)、夜蛾の計画の重要な鍵となっている呪骸が存在する。

 

【虎杖呪骸説】

 言うまでもなく、我らが主人公、虎杖その人である。

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 冷静に考えれば明らかだったのだ。

 「投げた砲丸がゴールポストにめり込む」「天与呪縛の禪院真希よりも高い身体能力」

 普通の人間ではあり得ない。

 虎杖は最初から宿儺の器となる為だけに生み出された人形なのである。

 

 そもそも、忌庫にて厳重に保管されるような宿儺の指が、百葉箱に置かれているなど、いくら呪術協会が酷い組織だったとしてもあり得ない。

 あれは虎杖に食べさせる為にそこに設置された、あるいは設置されていると記録を改竄したものだったのだ。

 

 「偶然、虎杖が宿儺の指を食べ、宿儺が受肉した」のだとすると、ニセ夏油の動きがあまりにも周到過ぎる。

 彼は宿儺が受肉すると立て続けに『所持していた』宿儺の指を少年院に置き、宿儺を味方につけるよう特級呪霊達を唆している

 宿儺が受肉した後に急遽計画を立てたような動きではない

 虎杖が宿儺を宿した事も、彼らの計らいだとしか考えられぬであろう。

 

 己の意志で選択しているかに思われた虎杖の行動は、あらかじめ夜蛾によって「設定」されたものであり、彼はそれに従っているだけなのだ。

 わざわざ自由意志だと本人に思い込ませているのは、宿儺を受け入れる精神的な基盤を構築する目的と、周囲に怪しまれぬようする為だろう。

 

 「尻と身長がデカい女が好み」と言いながら、実際には64話で明らかなように虎杖は異性の体型に対して無頓着であり、関心すら示していない

 この女の好みもまた単なる「設定」に過ぎず、虎杖の呪術の性能を引き出す師としての資質を持ち、彼を1級術師に推薦できる東堂と接近させる為に夜蛾が用意したものと考えられる。

 おそらく、虎杖には性欲すら無いだろう。

 

【夜蛾の目的】

 では、このような大掛かりな計画を立ててまで夜蛾は何を成そうとしているのだろうか。

 無論、最終的な目的までは解らないが、その為に彼が手に入れようとしているものは分かる。

 宿儺の力だ。

 

 特級呪霊達が宿儺に虎杖の肉体を支配させようとしているのとは逆に、夜蛾は虎杖に宿儺の力を制御させようとしていると考えられる。

 呪術全盛の時代の呪術師が総力を挙げても敵わなかった呪いの王の力を、自らの傀儡に制御させる。

 ひょっとしたら五条悟すら超えるかもしれない強大な力を、自由自在に操れるのだ。

 

 一方で五条を封印してしまえば、もはや敵など存在しない。

 何でも出来る。

 夜蛾の最終的な目的が何であれ、それを達成するのは容易になるだろう。

 

【生前の夏油との協力】

 夜蛾学長、夏油の内通者説でも書いたことだが、おそらく彼はニセ夏油のみならず、生前の夏油傑とも協力関係にあったと思われる。

 大々的に宗教団体を率い、各界の有力者と直接会って金を巻き上げていた夏油の居場所を全く掴めていなかったばかりか、虐殺事件を引き起こした夏油の暗躍を懸念する五条先生を「杞憂」と一蹴している。

 無能、の一言では片づけられぬ不自然さである。

 

 考えてみればおかしな話だ。

 夏油傑が狙った里香の存在はごく最近発覚したものだった。

 では、高専時代に呪詛師に堕ちてから10年以上もの間、夏油は他に何の計画も立てていなかったというのだろうか?

 

 賢明な読者諸氏にはもうお分かりだろう。

 本来は『宿儺の器』こそが、夏油傑の非術師殲滅計画の要だったのだ。

 「呪霊を取り込み操る」夏油の呪霊操術と、夜蛾学長の呪骸製作の技術。

 その結晶が虎杖という存在なのである。

 

 しかし、里香という存在が現れたことで、手間と時間をかけてわざわざ宿儺の力を得る必要は無くなった。

 乙骨を殺して里香を奪った方が遥かに手っ取り早いからだ。

 

 ニセ夏油の言動や、若い呪術師を危険に晒すやり口から考えても、夜蛾学長が夏油傑の思想に同調していたとは思えないから、最終的には裏切るつもりだったのだろう。

 とはいえ、夏油傑の策に「まんまと嵌められた」フリをして呪術師を新宿に動かしているので、里香の入手自体に賛同していたのは間違いなさそうだ。

 

【協力者、冥冥】

 冥冥さんは夜蛾学長とニセ夏油に協力していると考えられる。

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 今回の明治神宮前駅での彼女の行動はあまりにも不合理だった。

 領域展開を使える特級呪霊が待ち構えている恐れが強い事を知っていながら、僅か3人だけで突入するなど自殺行為だ。

 しかも、手の空いている1級術師達が3人も近くで待機しているのに、である。

 

 地下鉄内での真人の位置をあらかじめ聞かされており、危険は無いと分かっていた。

 そう考える他あるまい。

 冥冥の役割は何らかの作戦の為、他の1級術師を連れずに虎杖を地下鉄構内へと誘導することにあったのだろう。

 

【憂憂】

 当初私は冥冥さんは金でニセ夏油に雇われたのだろうと考えていたのだが、Chisato=Sailenjiさんの『憂憂は呪骸なのではないか?』という考察は実に興味深い

 確かに、幼い子供でありながら最前線に投入されているのは過酷な呪術師と言えども奇妙だし、重そうな戦斧を持ち運んでいるのも、呪骸だとすれば納得できる。

 冥冥の弟と紹介されながら姓が明かされていない事や、まるでパンダに付けられるような名前である事とも合致する考察だ。

 

 仮に憂憂が呪骸なのであれば、冥冥さんは金で雇われたわけではなく、最初から夜蛾学長の仲間なのかもしれないし、もっと言うと、彼女自身ももしかしたら夜蛾に作られた呪骸ということも考えられる。

 

 与幸吉、冥冥さん、そして傀儡呪術学の第一人者である夜蛾学長自身。

 監視能力に優れた人間が3人も計画に関わっているとなれば、もはや盤石とさえ言えよう。

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 裏表のない実直そうな印象に反して、異常なほどに用心深い夜蛾の性格が垣間見える。

 メカ丸をここであっさり始末できたのは、彼がおらずとも(不便にはなっても)監視活動は十分継続できる事が大きな理由だったのだろう。

 

【迷探偵、五条悟】

 さて、どういった推理でそこに至ったのかはさっぱり解らないものの、呪術協会上層部に呪詛師や特級呪霊の内通者がいることまでは突き止めた五条先生。

 しかし、彼は高専が襲撃を受けて宿儺の指が奪われてもなお、未だに彼らの目的が宿儺そのものにある事にすら気付いていない

 

 そこに思い至らなければ、虎杖が任務で宿儺の指とやけに接触する不自然さにすら気が付くことはできないから、そもそも虎杖が宿儺の指を食べた事も全て仕組まれていた可能性が脳裏に浮かぶ事はないだろう。

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 おそらく五条先生は今でも少年院の一件は、上層部が虎杖を抹殺しようとして引き起こしたものだと思い込んでいる。

 上層部に対するこの異常な憎しみを消せない限り、彼の思考には常にバイアスがかかることになる。

 自分が上層部の中で唯一(ある程度)心を開いている夜蛾学長を疑う事など、獄門彊に封印されるその時まで、五条悟には出来ないのかもしれない。