ネオ天草のジャンプ感想日記

ジャンプ感想を主に書いています。

夏油傑は最初から裏切っていたという事実と五条悟への嫉妬について【呪術廻戦 78話】

 第78話『玉折ー参ー』の感想等々。

 

※Twitter上にて非常に重要なご指摘を受けて追記した。

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ジャンプ45号の感想はこちら。

neoamakusa.hatenablog.com

第77話の感想はこちら。

neoamakusa.hatenablog.com

【裏切りの時期(※追記あり)】

 結論から言うと、夏油は天内理子の件をきっかけに裏切り者へと転落していったのではなく、最初から五条達のことを裏切っていた

 それは冒頭に貼った0巻での彼の台詞から読み取れる。

 夏油は在学中から自身の術式の効果を周囲に対して過少に申告していた

 担当教師である夜蛾のみならず、親友であったはずの五条のことすら騙していたわけである。

 

 彼らが完全にその情報を信じ込んでいたことから考えても、呪術界全体に自身の術式の性能について仲間に対してすら嘘を吐く慣習があるわけでないことは明白だ。

 そうだとすれば、五条達は夏油が嘘の申告をしていることをもっと疑ったはずだからである。

 

 つまり、夏油傑は少なくとも高専に入学し、自身が取り込める呪霊の範囲を把握した時には、既に誰にも心を開いていなかったことになる。無論、五条悟に対しても。

 具体的な意志があった訳ではないだろうが、彼は最初から五条達と敵対することになる事を想定していたのだろう。

 

※追記

 Twitterにてこの仮説に対して下記のような指摘を受けた。

 なるほど、確かにもし夏油が「自分の術式では主従関係にある呪霊は元の主の首を獲らない限り取り込めない」事を伏黒甚爾との戦いの中で初めて知ったのであれば、『裏切り』はこの一件の直後から始まったことになる。

 と、なれば、それまでの夏油は作中の言動通り、本気で非術師を守ろうとしており、五条達にも元々はちゃんと心を開いていたと考えて何の矛盾も発生しない。

 

 夏油がこの倉庫呪霊の取り込みに失敗した理由に関してはまだきちんと明かされてはいないが、もし柚栗ユカリさんの仰ることが正解だとすれば、この記事の考察にはあまり意味が無くなると言わざるを得ない。

 単純に夏油はこの時から胸に叛意を秘めて、倉庫呪霊を取り込んだ事実を隠しながら、「実は私は主従関係にある呪霊は取り込めない事が新たに判明した」、と協会に嘘の申告をしたのかもしれない。

 

【選民思想】

 要するに、夏油は伏黒甚爾や盤星教のことが無くとも、最初からずっと非術師を見下していたのだ。

 彼は一般人の家庭に生まれながら呪力を手にし、しかも在学中に特級呪術師となる程の比類なき才覚に恵まれている。

 それ故、力を持たず、守られるだけの非術師を内心では蔑視していた。

 だからこそ、高専や同輩達にも自分の能力について騙していたのだろう。いずれ自分が呪術師の価値観に背くことを予感して。

 

【挫折と嫉妬】

 では、そんな選民思想に塗れていた夏油がなぜ今までは闇落ちしなかったのだろうか?

 考えられるのは、「圧倒的な強者である自分が、非術師を守ってやっている」という状況に、彼の選民としての自負が満たされていたということだろう。

 ある程度それで満足できていたが故に、彼は自身の差別意識を抑え、模範的な呪術師として振舞うことができた。

 

 転換のきっかけとなったのは、言うまでもなく天内理子の一件だ。

 彼はここで到底許せない非術師達と接触してしまった。

 これまでの「圧倒的な強者として非術師を守る」という構図から得られる快感が薄らぎ、その快感と引き換えに我慢していた呪霊を取り込む苦痛に耐えられなくなりつつあったわけだ。

 

 そして、九十九由基から「呪霊を食わなくて良い世界を作る方法」を伝授され、更には自分を慕っていた灰原の死を受けて、心はどんどん闇に傾いていった。

 トドメとなったのが、七海のこの言葉ではないかと私は睨んでいる。

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 特級呪術師でありながら、自分は七海から必用とされていない。

 五条一人で全ては事足りるのだと、そう後輩から言われてしまったわけだ。

 これにより、夏油の「強者の自分が弱者を守る」という自負心は完全に崩壊した

 

【運試し】

 夏油が硝子に語ったこの言葉には、五条悟が自分に付いて来てくれるかもしれないという思いも含まれていたのかもね。

 完全に心を開いてはいなかったとはいえ、友人と思っていたのは本心だろうし、五条が度々非術師を軽視するような発言を繰り返していたことからも、もしかしたら計画に賛同してくれるのではないか……そういう期待を抱いていておかしくはない。

 

 とはいえ、結局のところ五条は自分のようには「イカレ」てない。

 その諦観があったからこその「運試し」という言い回しだったのだろうけど。

 

 もっとも、夏油が五条に嫉妬していたという上記の推測が当たっているとすれば、本心から五条と共に歩むことを望んでいたかどうかは分からない。

 彼と組めば計画は飛躍的に実現性が増すだろうが、その代わり常に夏油は劣等感に苦しむことになる

 本当は五条がその場に留まり、そして自分を殺すことができないというこの結果こそが、夏油にとっての最善だったかもしれない。

 

【ニセ夏油】

 さて、ここまで夏油について語って来てなんだが、過去編で描かれた夏油は既に死んでおり、本編で暗躍している彼は真っ赤な偽物である。

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 この辺りが芥見先生の真に恐ろしいところだと言えよう。

 単行本一冊以上もかけて夏油と五条の因縁を描いておきながら、既にその縁は切れているというオチを読者にお出しするわけだ。

 

 このニセ夏油は本物と思想を共有しておらず、若い呪術師であろうとも容赦なく死に追いやる

 夏油にとって初めての同志だったこの幼い少女2人(美々子と菜々子)は、ニセ夏油に利用された挙句、ボロ雑巾のように捨てられることになるだろう。

 来るべきその展開を想像するだけで、私はとても悲しい気持ちになる。

 

【伏黒恵】

 ふむ、やはり恵が「両親は蒸発した」と思い込んでいるのは、五条からそう吹き込まれたからのようだ。

neoamakusa.hatenablog.com

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 伏黒夫人は現時点では無事のはずだが、そういう嘘を吐く以上、少なくとも当面は伏黒姉弟と接触して貰っては困るはず。

 

 さてはて、五条は一体どうやって伏黒夫人を子供達から「引き離した」のか。

 金を掴ませて高飛びさせたか、あるいはそれとももっと確実な手段を使ったか。

 

【その他】

・どこからどこまでが夜蛾の計算通りなのやら。

neoamakusa.hatenablog.com

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・過去編から一番人格が変わってるのって家入硝子だけど、結局なんであんなに暗くなっちゃったのかは描かれなかったな。

 

・呪術界には魔法界のような「汚れた血」的な思想は無いのかな。

 

・ヒゲ、お前が協力してたんかい。

 

・あ、園田さん死んじゃった……。全く構わないけど。