ネオ天草のジャンプ感想日記

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九十九 由基なんて嫌い。嫌い嫌い大嫌い。【呪術廻戦 第77話感想】

 第77話『玉折ー弐ー』【ジャンプ44号】の感想。

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 チッ。

 チッ、チッ。舌打ちが出ちゃうな。

 まさか夏油の過去でこんな予想外の方向から不快な気分にさせられるとは。チッ。

第76話『玉折』感想はこちら

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44号のONE PIECE感想はこちら。

neoamakusa.hatenablog.com

【夏油の目的】

 なるほどなー。

 結局のところ夏油が「非術師は皆殺し」という思想に至ったのは何がしかの強い信念があったのではなく、「呪霊を食べなくて済む世の中にしたい」という個人的な願望故だったわけか。

 その為の「言い訳」に『非術師は劣った存在』、『霊長の進化』という屁理屈を並べていた、と。

 

 彼が非術師を見下すようになったのも、「何で俺がこんな辛い目に遭ってまで他人を守らなきゃならないんだ」という憤懣が溜まっていったからなんだろうなあ。

 伏黒(禪院)甚爾と盤星教の信者達という全く異質な存在を一纏めに「猿」として蔑視していた事に違和感を抱いていたのだが、夏油の中にはまず最初に「呪霊を食べるのが辛い」という感情があり、その憎悪を「守る対象」である非術師に向け始めていた。

 そして、明らかな『悪』であった伏黒甚爾と一般的な非術師を敢えて混同することで、非術師に憎悪を向けることを自分の中で少しでも正当化しようとしたのだろう。

 伏黒甚爾は悪。そしてあいつは非術師。だから非術師どもを憎むのは当然なんだ。盤星教の連中がその証拠だ……というように。

 

 無論、これは論理の飛躍に過ぎないが、夏油にとっては「非術師への恨み」を正当化し、少しでも己の葛藤を鎮める事こそが重要だった。

 だから無意識のうちに伏黒甚爾と普通の非術師を一緒くたにしたり、盤星教の信者などという特殊な非術師を一般化するなどという理屈に合わない心理となっていたわけである。

 

 任務の中、いや日常生活の中で善良な非術師にも数多く会っているはずだ。

 だが、彼らの存在を認識してしまうと、非術師を憎むことが正当化できなくなる。

 故に、盤星教信者などという極端な人間ばかりを脳裏に焼き付け、他の多くの非術師の存在は見ないフリをしていたのだろう。

 

 今回でグッと夏油に親しみを覚えるようになったというか、上弦の鬼達のような生々しい小物さを感じられてグッと好感度が上がった。

 とはいえ、言い換えれば今後も宿敵として引っ張る程の格は無いということでもあるから、本物の夏油は0巻できっちり殺して、本編ではニセ夏油を持ってきた芥見先生の判断は正解だったんだろう。

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【灰原】

 またあっさりと。

 まあ、読者から「こいつ絶対死ぬだろ」と思われているであろうことは芥見先生も分かっていただろうから、下手に引っ張らずに始末をつけたんだろうな。

 

 ごめんね、夜蛾の手下とか疑って……。

 

【九十九 由基】

 夏油が闇落ちしたのこいつのせいやんけ!!

 腹立つわあ、こいつ……。「君がこれから選択するんだよ」じゃないんだよ。

 そんな悠長なこと言ってる場合じゃなかったでしょ。

 

 強力な力を持つ呪術師が非術師を見下していると告白し、非術師の皆殺しまで口にしてんのよ?

 明らかに危うい精神状態じゃないの。何でそこで突き放したんだ。

 せめて担当教師に報告するくらいしろよ。

 

 ろくでも無い「助言」を送って夏油の闇堕ちを間接的に後押ししたくせに、格好付けて出来る女アピールして去っていきやがって。

 こういう奴が私は大嫌いなんですよね。

 虫唾が走る。

 

 何が嫌かって、こいつは今後も普通に味方として登場するであろうってこと。

 きっと頼れる姉貴分のような面して現れるんだろうな。

 あー、腹が立つ腹が立つ。

 

【一筋の光?】

 とはいえ、だ。

 実のところ私は、九十九が今後「悪役」になることに多少期待を寄せている。

 つまり、彼女のこの配慮の無い振る舞いは、作者が意図的に描いているという可能性だ。

 

 そもそも、悩みを打ち明けた夏油に対して、「君がこれから選択するんだよ」などと回答すること自体が異常者の反応だ。

 呪術廻戦の日本社会には『ジョン・ウィック』の殺し屋ばりに呪詛師がごろごろ存在している。

 呪術師が外道に堕ちるのはそう珍しいことではないわけだ。

 となれば、夏油がこのまま呪詛師となる恐れがあると、当然九十九にだって解っていただろう。

 にも関わらず彼自身に選択を委ねたということは、夏油が非術師を見下して、呪詛師へと身を堕とすことを彼女自身、許容していたことになる。

 

 また、「星漿体のことは気にしなくていい」というズレた慰めも注目すべき点だろう。

 九十九は、「天元様は安定しているのだから、任務の失敗に思い詰めることはない」と言っているわけだ。

 そこには、「夏油が星漿体の少女の死そのものに傷付いている」という発想が微塵も感じられない

 

 思うに彼女はマクロな視点で「世の中を良くしたい」と考える程度の人間性はあっても、そこに暮らす個々人に対して共感する能力が欠けているのではないだろうか。

 

 さて、これに似た人間性の持ち主が他にも1人いる。

 言うまでもなく、五条悟である。

 

 私は本作のラスボスは五条になると予想しているが、その仲間の一人に九十九も加わるとしたらどうだろう。

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 「非術師を皆殺しにする」程にはイカレていなくても、「人間を全員呪術師にする」という狂った目的の為に過激な計画を立てる五条先生と九十九。

 そんな彼らを止める為に、生徒達が立ち向かう。

 

 教師ディスや高齢者ディスの件でも私の印象を引っ繰り返してくれた芥見先生のことだ。

 九十九由基の欺瞞に関しても、今回の描写は後の逆転を秘めた釣り餌に過ぎないというのは十二分に期待できる。

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 後に殺戮を行う夏油を「良い人」と評した灰原が、九十九にも同様の評価をしている辺りもいかにも前振りっぽいしなあ。